ミトンブログ

岡山市中区高屋のパン屋、mittenのブログ。

カメラよりも

まちのパン屋の前にある道路は、

小学校の通学路である。

そのため、

小学校で何かしらの催しがあると、

人通りがずいぶん多くなる。

 

運動会、参観日、

さらには選挙の投票日。

人通りが多くなると、

有難いことに

パン屋を訪れるお客さんも多くなる。

 

今日はなんだか人通りが多いなー。

と思っていると、

その日は小学校の学習発表会だという。

学習発表会帰り、

一組のご夫婦が教えてくれた。

 

間もなく、

学習発表会帰りの方が次々とご来店。

 

束の間の

てんやわんやな時間がひと段落したのは、

ひとりのお母さんがやって来たときだった。

飾らない上品さがいつも素敵な彼女。

今日は、

ひと仕事終えたお子さんも一緒である。

 

話題はやはり、

先ほどの学習発表会。

 

「お母さんもカメラを回したり

忙しいですよね」

そう投げかけると、

意外にも

「いえいえ」と返ってきた。

 

「ビデオカメラは回さないんです。

   カメラを持ってると

   ちゃんと拍手ができないから。」

 

なるほど。

 

「子供が頑張ってるところ、

   やっぱりちゃんと

   拍手してあげたいからね。」

 

素晴らしい。

 

この子はきっといい子に育つだろうな。

一緒にいたお子さんを見て、

誠に勝手ながら、

そう思った。

 

私たちには子供がいないので、

子育てに関する

現実のところはよく分からない。

しかし、

似たようなことを一つ

思い出した。

 

毎度おなじみ、

広島はマツダスタジアム

野球観戦での一コマである。

 

いよいよやってきた

広島カープの得点チャンス。

皆が声援を送る中、

周りを見渡してみると、

夢中で

グラウンドにスマホカメラを向ける人は

結構多い。

 

もちろん、

観戦の仕方は人それぞれである。

 

けれども

個人的には、

今、ここ、

目の前で戦う選手達の背中を

この声援で後押ししたいと思っている。

3万人の大声援が

どんな劣勢をも跳ね返すことは、

今年も選手達が証明してくれた。

 

学習発表会に野球観戦。

意外とパンも

同じなのかもしれないなと思っている。

 

インスタ映えという言葉が示すように、

昨今の飲食業界を語る上で、

SNSは欠かせないツールとなっている。

 

一つのブームは瞬く間に火がつき、

驚くほどのスピードで消えてゆく。

すぐに売れるものは、

すぐに売れなくなる。

そして、また新しいブームを探す。

売り手も買い手も

いつもSNSの写真に夢中である。

 

あのお母さんは、

たぶんパンの写真を

撮らないだろうなと思った。

またまた、

誠に勝手ながら。

 

まちのパン屋が想うのは、

パンの先にある食卓、

日々の生活である。

 

キラキラした写真も、

一時のブームも、

パンのある食卓、

食文化をなかなか育ててはくれない。

 

地道に

パンの魅力を伝えていかなければ。

 

フランスパンは、

そんなに硬くないですよ。

食パンには無い、

独特の旨味があるのです。

 

こんなことは、

なかなか、

写真やブームに乗って

伝わるものでもない。

 

菓子パン天国と言われる岡山で、

なんとかパンの可能性を広げたいなと。

 

ときにはSNSにも頼りながら、

まちのパン屋は、

今日もパンを作る。

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