ミトンブログ

岡山市中区高屋のパン屋、mittenのブログ。

昼休みの売店には、

まちのパン屋さんが

パンを売りに来ていた。

 

私が、高校生のときの話である。

授業の終わりを告げるチャイムが鳴ると、

瞬く間に

売店の前には人だかりができる。

 

人気のパンは争奪戦。

売店のパン屋さんは大盛況。

連日のようにパンは売り切れていた。

 

その理由は、

パンがおいしいから、

というのは間違いない。

ただ、

大繁盛の理由は、

もうひとつあったのではないかと思っている。

 

それは、売店のお兄さん。

とにかくイケメンなのである。

そのお兄さんは、

2人組ロックバンド、

ポルノグラフィティ新藤晴一氏に

そっくりであった。

 

もう、一部の女子生徒からは

ハルイチ!」と呼ばれていたくらいだ。

 

ハルイチ(敬称略)がパンを売れば、

そりゃあ売店のパン屋も大繁盛する。

そうは言っても

ハルイチが、

どこのパン屋にもいるわけではない。

 

ただ、

たとえ、ハルイチがいなくとも、

パン屋は「顔」を大事にしている。

 

「顔」は、人のみにあらず、

パンだって持っている。

一つ一つのパン、

それぞれに「顔」、

あるいは「表情」というモノがある。

 

パンだって、

いい「顔」のパン、

いい「表情」のパンがあるのだ。

 

なにも、

キラキラのフルーツが乗ったパンが、

他と比べて

イケメンというわけではない。

 

表面に塗った卵のツヤが、

綺麗に乗ったクリームパン。

程よく蒸気が乗り、

しっかりクープが立ち上がったフランスパン。

絶妙なホワイトラインを持った角食パン。

 

それぞれのパンに、

それぞれのいい「顔」、

いい「表情」というモノがある。

 

やはり、

いい「表情」のパンは、

お客さんから選ばれるのも早い。

 

人間ならば、

「顔だけじゃなくて、性格も大事だよ。」

なんてことも言える。

 

しかし、

パンは、そうはいかない。

お客さんにとって

初めてのパンを選ぶときは、

「顔」が全てと言っても過言ではない。

 

「こんなですけど、性格はとてもいいです。」

そんなフォローをパンに入れたところで、

あまり聞き入れられない。

 

はたまた、

動物のように「ブサかわ」なんて

寛大なジャンルもない。

 

パンは、

いい「顔」、

いい「表情」に焼き上げないと、

なかなか振り向いてはもらえない。

 

だから、

毎日、同じパンでも、

微調整、微修正を繰り返す。

そうして少しでも、 

いい「顔」のパンを焼こうと、

私たちは考えている。

 

まちのパン屋は、

今日もいい「顔」のパンを焼くために

試行錯誤を繰り返す。

 

たまには、

売店のパン屋さん、

ハルイチを思い出す。

あなたがここにいたら』と

考えないこともない。

 

当然、

まちのパン屋に

ハルイチはいない。

 

けれども、

いや、だからこそ、

いい「顔」、

いい「表情」のパンを作ろうと

常日頃、心掛けている。

 

もちろん、

そこは性格も伴っているつもりだ。


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