ミトンブログ

岡山市中区高屋のパン屋、mittenのブログ。

クリスマスのイケメン

パン屋での買い物に

子供たちの「おねだり」は付きものである。

 

「あともう1個欲しい!」

「ジュース飲みたい!」

 

ご想像の通り、

ここで子供たちの希望が叶うことは、

なかなか難しい。

 

「1個だけって言ったでしょ!」

「お家にあるからダメ!」

 

特にレジ前での攻防戦は、

お父さん、お母さんに

軍配が上がることがほとんどである。

 

12月のとある休日、

これまた、

レジ前での攻防戦が始まった。

 

会計中、

お母さんの隣から、

ひょいっと、

小学生の男の子の手が伸びる。

 

レジに置かれたのは、

クリスマスラッピングを施した

焼き菓子セット(¥500)である。

 

パン屋の経験上、分かる。

(これは、

「ダメ、返してきなさい!」のパターンだ。)

 

すかさず、

お母さんが反応する。

「何これ?」

 

(やっぱり。)

男の子は圧倒的に不利な状況にある。

 

と思っていたが、

彼は一味違っていた。

 

男の子のひと押し。

「お母さんにプレゼントしたい!

  あとで500円払うから!」

 

(!?)

 

彼から出てきた言葉は、

思いもよらず、イケメンであった。

もちろん、

こんな「おねだり」を目にしたのは、

パン屋としても初めてである。

 

お母さんも、

彼の言葉に少し驚いている。

(これは、

「分かった。買ってあげるから。」

「今日だけよ!」 となるのかな。)

 

と期待したが、

とんだ思い上がりであった。

 

お母さんも

一筋縄ではいかないようである。

「ちゃんと払うんよ!

  絶対忘れんから!」

 

世の中、そんなに甘くない。

とはいえ、交渉成立のようだ。

 

「うん!払う!」

男の子も社会の厳しさを

よく理解している。

 

こうして彼は、

無事にプレゼントを確保することができた。

 

会計を終え、

パンの入ったビニール袋を

お母さんに手渡す。

プレゼント用の焼き菓子セットは、

クリスマス仕様の紙袋に入れて、

男の子に持ってもらった。

 

お母さんへのプレゼント、

クリスマス焼き菓子セット。

まちのパン屋としては、

親子で食べてもらえると嬉しい。

(きっと、2人で食べてくれるだろうな。)

そう思いながら、

素敵な親子の背中を見送った。

 

まちのパン屋は、

クリスマスに焼き菓子セットを作る。

 

思いもよらず触れた

イケメンな心遣いと

社会の厳しさは、

期間限定モノならではの楽しみである。

 

いよいよ

クリスマスまであと2週間を切った。

キラキラ光るイルミネーション。

ピザにチキン、ケーキを食べる。

サンタさんから貰うプレゼント。

 

どうやら、

それだけがクリスマスではないらしい。

 

クリスマスの楽しみ方も色々。

そう教えてくれたのは、

パン屋で繰り広げられる

親子の攻防戦。

他ならぬ、イケメンな男の子である。

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