ミトンブログ

岡山市中区高屋のパン屋、mittenのブログ。

究極の選択

冬、

受験シーズンである。

 

受験をはじめ、就職、結婚。

人生の節目と呼ばれるものには、

何かと「究極の選択」がつきものである。

 

Aにすべきか、Bにすべきか。

はたまた、

本当にAでいいのだろうか…

 

しかし、

「究極の選択」とは言うものの、

それがやってくるのは、

何も人生の節目だけではない。

 

個人的に

どうしても忘れられない

「究極の選択」の風景がある。

 

場所は、

いつかの東京。

電車の中。

池袋駅に向かう西武線の車内では、

5歳くらいの男の子とお母さんが話していた。

 

お母さんが、

語気をやや強めて問いかける。

レゴランド(お台場)と本屋、

 どっちに行くの?」

 

向かいの席でなんとなく

親子の会話を見ていた私も、

思わず悩んでしまった。

 

これは、どっちだ。

いや、

というよりも

レゴランドか本屋、

どちらかしかダメなのか…

 

これぞ、「究極の選択」である。

 

男の子も「究極の選択」を前に、

苦悶の表情を浮かべている。

結局、彼も答えを出せぬまま、

電車は池袋駅へと滑り込んだ。

 

「究極の選択」は

意外と

生活のすぐそばにある。

 

まちのパン屋だって、

毎日、「究極の選択」に溢れている。

 

カレーパンにするか、

クロックムッシュにするか。

明日の朝食は、

イギリスパンか、食パンか。

あと1個。いや、我慢。

 

ともあれ、

こうして悩んでもらえるというのは、

有り難いことである。

 

コンビニでタバコを買うように

パンを選ぶのでは、

何だか味気ない。

 

「究極の選択」は、

知らず知らずのうちに

日々の生活を

豊かにしてくれるはずだと思っている。

 

まちのパン屋は、

今日も「究極を選択」を見届ける。

 

好き嫌いはそれぞれあれど、

私たちは、

全てのパンを大切に、

心を込めて作っている。

 

なので本音を言えば、

「究極の選択」を前にしたときに、

選ばなかった方の道も

是非いつかは試していただきたいところである。

 

「究極の選択」なのに、

いろんな道を試せるのは、

パン屋ならではの楽しみだと思っている。

 

「本屋は、

 レゴランドの帰りに行けばいいよ。」

あのとき、

あの男の子に

そう言いたかったのは、

ここだけの話である。


f:id:breadmitten:20180119230644j:image