給食のパンを探して
今、考えてみると、
なかなかすごいことである。
というのは、
小学校の給食で食べていたパンの話。
給食のパンといえば、コッペパン。
私は、たまに登場するデーツパンが好きだった。
文字通り、コッペパンにデーツが練り込まれたパンである。
(デーツとは、ナツメヤシの果実)
すごいのは、
いつも突如として現れるデーツパンを
小学生が残さず、普通に食べていたことである。
今でこそ、スーパーフードとして注目されているデーツだが、
私が小学生だったのは、約20年前。
デーツの正体を知っていた小学生なんて、ほぼいなかったのではないだろうか。
私も、デーツの正体が分かったのは、パン屋で働くようになってからだった。
残念ながら、小学校を卒業すると、
デーツパンを食べることがなくなった。
探しても探しても、
どこにも売ってないのである。
焼き立てパンブームの中、
次々とおしゃれなパン屋さんができるけれど、デーツパンは見つけられない。
理由は、なんとなく分かる。
地味なのだ。
もちろんSNS映えもしない。
だったら、自分で作ろう。
そう決めた。
そして今年、
「デーツ&クルミロール」を作った。
販売スタートから、はや半年が経つ。
店頭に並べると、やはり地味である。
SNS映えもしない。
しかし、有難いことに
勇気を出してそのパンを手に取り、
気に入ってくれた方が何人もいる。
こういうパンが受け入れられると、
パン屋はとてもうれしい。
まちのパン屋は、
滅多に歓声を受けないような、
地味なパンだって作り続ける。
もしかすると、
いつかの自分と同じように、
デーツパンを探している人が、
今日、ここに来るかもしれないから。