ミトンブログ

岡山市中区高屋のパン屋、mittenのブログ。

パンの色気

突然だが、

おいしいパンには

色気があると思っている。

 

色気のあるパンとは、

つまり

見た目と味のギャップ。

派手さは無いけれど、

想像以上の奥深さがある。

長く愛されるパンには、

どこかしら色気がある。

 

毎日パンを作りながら、

そう思っている。

 

分かりやすいのは、

デニッシュである。

 

デニッシュというのは、

その名の通り、

デンマークで愛されてきたパンの一種。

 

固く練り上げた生地に

バターを二度、三度と折り込む。

クリームやナッツ、

チェリーなどをトッピングして

焼き上げたそれは、

サクサクとした食感が何よりの特徴だ。

 

日本の

おしゃれなパン屋さんのデニッシュは、

上へ上へ、

煌びやかにフルーツが盛られ、

店頭を彩る。

 

なるほど、

これは映える。

確かにこの華やかさも、

デニッシュの大きな魅力である。

 

しかし、

個人的にデニッシュには

ちょっとした思い入れがある。

 

デニッシュと言えばデンマーク

そこに並ぶデニッシュは、

日本の華やかなモノに比べると、

はっきり言って

地味である。

 

ただ、

その地味なデニッシュには

間違いなく色気がある。

 

見た目以上に風味豊かで、

その中には色んな味が、

層を成して

詰め込まれている。

 

パンのおいしさ、

つまりは色気、

それは中に中に隠されている。

 

この、

外には見えない色気こそ、

デンマークでデニッシュが

長く愛されてきた所以なのではないかなと

私たちは思っている。

 

だから、

ミトンのデニッシュも

色気は中に中に隠している。

 

例えば、

カスタードクリームのデニッシュ。

クリームの下には、

ラム酒を効かせたアーモンドペーストを

ひっそりと仕込んでいる。

そう。

おいしさの色気は中に中に。

 

何度食べても驚き、

安心してもらえるように、

肝心なところは

外から見えないようにしている。

 

もちろん、

デニッシュ以外のパンにも

きちんと色気がある。

 

フランスパンやイギリスパンの色気。

それは、

後から後からやってくる。

パンを口にしたときに、

最後に残る香ばしさ。

それは、

クープのちょうど立っているところ。

はたまた、耳の部分。

 

こういうパンの色気は、

だいたい終わりの方、

その端っこにあると思っている。

 

食パンの色気。

それは、奥ゆかしさ。

そのまま食べておいしいのはもちろん、

バターやジャムを塗ったとき、

パンは一歩下がって、

上手にそれらを引き立てる。

 

この変幻自在の色気こそ、

おいしい食パンの条件だと思っている。

 

パンの色気というのは、

なかなか店頭では目立たない。

 

長く愛されるおいしさ、

色気というのは、

中に中に、

後から後から、

奥に奥に、

ひっそりと隠れているモノである。

 

まちのパン屋は、

今年も

色気のあるパンを作るため、

試行錯誤を繰り返す。

 

その思いが、

一人でも多くの人に伝われば

うれしい。

 

みなさま、

騙されたと思って、

パンの色気を探してみてはいかがでしょう。

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