ミトンブログ

岡山市中区高屋のパン屋、mittenのブログ。

ドドドォー!!!ナツ

電話が鳴る。

「ドーナツ20個、

  20分後くらいにいけるかな?」

 

電話の主は、

他ならぬ、

たまごドーナツの生みの親。

 

ミトンのたまごドーナツは、

この方の

「素朴でおいしいドーナツが食べたい」

とのリクエストから生まれた。

 

おかげさまで、

今年初めに登場した

たまごドーナツは、

ここまで作り続けることができた。

 

たくさんの方に愛される

丸いたまごドーナツ。

しかし、

まちのパン屋で

「ドーナツ20個!」

と一度に大量のオーダーをするのは、

生みの親の彼ぐらいである。

 

はじめは、

「ドーナツ20個!1時間後くらいに!」

というオーダーだった。

訪問先へのちょっとした手土産である。

せっかくなので、

某ドーナツ屋さんのように箱に入れて

お渡しする。

 

そんなオーダーが時々

切羽詰まったものになってきた。

「20個!15分後!いけるかな?」

さすがに少し厳しい。

「20分いただければ!」

とお願いする。

 

間もなく、

ドーナツを取りに彼がやってきた。

けれども、

その表情はどこか冴えない。

 

いつものように

「お土産ですか?」

と尋ねてみる。

「いや。」

やはり冴えない。

 

会社を経営する立場にある彼は、

振り絞るように答えてくれた。

「不良品が出たから、

 これから謝りに行く。」

 

なるほど。

だから切羽詰まっていたのか。

だから15分後という急なオーダーなのか。

ならばこちらも

頑張って応えるしかない。

 

謝罪の手土産にたまごドーナツ。

それを初めて聞いたときは、

有難いような、

なんだか申し訳ないような、

複雑な気持ちであった。

 

だが、あるときふと思った。

絶対に彼はそう考えている。

もしかしたら、

実際に言っていたり・・・

いや、さすがにそれは無いか。

 

『どうかこれで

  丸く収めてはいただけませんか。

ドーナツだけに。』

 

ミトンのたまごドーナツは、

丸い抜き型で抜いていない。

少し伸ばした生地を

ベーグルのようにぐるんと巻いて

丸い形にしている。

なので、

ひとつひとつの形や

揚げたときの生地の弾け方は、

それぞれ微妙に異なっている。

 

『どうかこれで

 丸く収めてはいただけませんか。』

 

もしかするとこんな事

彼は言っていないし、

思ってもいないかもしれない。

しかし、

私たちの方は、

勝手にその言葉を胸に

丸いドーナツを作るようになってしまった。

 

『丸く収まれ。丸く収まれ。』

そう念じながら、

ひとつひとつ

丸いドーナツを形作っていく。

個性的なそれぞれの形は

ご愛嬌である。

 

まちのパン屋は、

今日もドーナツを作る。

 

謝罪する機会なんて

無い方がいいかもしれない。

でもでも、

雨降って地固まる

という言葉もある。

 

たまごドーナツで

少しでも事がうまく運ぶならば、

まちのパン屋としては、

これ以上無い

やりがいである。

 

たまごドーナツの向こうには

色んな物語があることを

彼に教えてもらった。

そんな、

たまごドーナツの裏話。 

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