ミトンブログ

岡山市中区高屋のパン屋、mittenのブログ。

国産

まちのパン屋は住宅街に店を構え、

オープン時間は朝から夕方まで。

この条件の下、

やはり出会ったのは、ただの一度。

 

お酒を飲んで、

きっちり出来上がったお客さんである。

 

からの「国産」の話を。

 

あれはミトンオープンから間もない、

12月の夕方。

店の前の通りを歩いていた男性が、

フラリとご入店。

年齢は50〜60歳台といったところ。

特徴といえば、

明らかに酔っ払っていることだった。

 

一言二言、言葉を交わし、

上機嫌でパンを選び始める。

 

すると、

ベーコンエピを指差して質問。

「このベーコンは、国産かな?」

 

「はい。

    国産のベーコンを使用しております。」

 

お客さん、

納得のご様子でトレイに載せる。

 

これまた、

アップルパイを指差して質問。

「このリンゴは、国産かな?」

 

「はい。

   国産のリンゴを使用しております。」

 

お客さん、

納得のご様子でトレイに載せる。

 

こちらが少し安心していると、

お客さんも、さらにご機嫌になった。

 

そして、嬉しそうに教えてくれた。

「ワシは彼女が3人おるんじゃ!3人!」

「みんな、フィリピンの女の子!」

 

ん?

 

「いや、そこは国産じゃないんかい!」

という会心の一撃は、

立場上、必死に飲み込んだ。

 

そんな訳で、

彼は、忘れられないお客さんである。

 

ただ、それだけではなく、

彼は、一つ大事なことを教えてくれたと

今は思っている。

 

最近、

食べ物に関しては、

「国産」というフレーズが

ブランド化され、

独り歩きしていることが多々ある。

 

 「国産」というレッテルが、

闇雲に良いものであると信じられ、

その中身が見られないことも少なくない。

 

彼のように、

「国産」が大事な場面があれば、

そうじゃない場面だってある。

 

大切なのは、

「国産」であろうと無かろうと、

レッテルに捉われることなく、

その中身の善し悪しを

きちんと判断することである。

 

これは、

実際にやってみるとなかなか難しい。

考えることを止めてしまうと

その判断ができなくなってしまう。

 

パンという、

異文化の象徴のようなモノと

向き合っていると、

その「国産」問題にぶつかることも

余計に多くなる。

 

きっと、

これからも考え続けるしかない。

 

 

思いもよらず、

話が綺麗にまとまってしまった。

彼に感謝したい。

 

まちのパン屋は、

明日もベーコンエピを焼く。

 

ベーコンは「国産」だ。

 

それは、

大山ハムのベーコンが、

このパンと一番相性が良く、

パンを最高に美味しくしてくれると思うから。

 

だから今、

「国産」のベーコンを使っている。

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